第三章・城の住人





「……ん……ぅ」
 ランボが重い瞼を開けると、視界に映ったのは見慣れぬ天井だった。
 白亜の石で上品に装飾を施された天井には小振りのシャンデリアが吊るされており、ランボはそれを寝呆けた眼でじっと見つめる。
 ランボは思考が働かない頭で、自分は夢でも見ているのだろうかと思った。
 だってランボは戸板で打ち付けられただけの粗末な天井しか知らないのだ。こんな華やかな天井もシャンデリアも今まで見た事がない。
 ランボは届かないと分かっていながらも、夢心地のまま天井から吊るされたシャンデリアに手を伸ばそうとする。だが。
「つ……っ」
 手を動かそうとした途端、背中に激痛が走った。
 背中に走った激痛は夢心地だったランボの意識を一瞬にして現実に引き戻してしまう。
 そして、ランボは激痛の原因を思い出した。
 ランボが住んでいた村がヴァンパイアに襲われ、戦っていたランボは重傷を負ったのだ。その怪我はヴァンピール特有の自然治癒力でも追いつかず、無様にも意識を失ったのである。
 ランボはその時の事を思い出して悔しげに唇を噛むが、自分が置かれた現状が奇妙である事に気付く。
 自分は気を失い、あのまま死んでも可笑しくなかったというのに何故か生きているのだ。
 しかも偶然生き延びたという状況ではなく、怪我は治療が施され、保護されたという状況なのである。
 身体を動かす事が出来ないランボは、視線を巡らせてこの場所が何処なのか把握しようとする。
 だが、室内を見回して現状の把握など出来る筈はなかった。
 現在自分は上等なベッドに寝かされており、室内の装飾や置かれている調度品や日用品も一級品ばかりなのである。こんなベッドで眠るのも初めてなら、こんな室内の光景を目にするのも初めてなのだ。
「ここは何処なんだろう……」
 ランボは不安気に呟いた。
 それは独り言のつもりだったが、


「此処は俺の城だ」


 ふと、思いがけず返事が返された。
 予想外の事にランボは驚き、声がした方に視線を向ける。
「リボーン……っ」
 そこに立っていたのはリボーンだった。
 部屋の扉に凭れるようにして立っていたリボーンは、目覚めたランボを何の抑揚もない眼差しで見ていた。
 ランボはリボーンの姿に息を飲む。
 あの村を襲ったのはヴァンパイアであり、リボーンも自分はヴァンパイアだと言ったのだ。
 その時の事が頭を過ぎるが、今はどうして此処にリボーンがいるのか分からない。
 十年振りの再会を喜びたい気持ちもあったが、今は分からない事が多過ぎた。
「どうしてリボーンが此処に……」
「此処は俺の城だ、俺がいるのは当然だろう。質問の前に、どうしてお前が俺の名前を知っているのか答えろ」
 ランボの質問を遮り、先にリボーンが質問を口にした。
 リボーンはランボを見据えたまま部屋に入ってくると、そのまま枕元に立ってランボを見下ろす。
 今、リボーンから向けられる眼差しに懐かしさを湛えるような色はない。
 その事に、ランボは小さく息を漏らした。
 再会を喜びたい気持ちも、リボーンがヴァンパイアである事の複雑な気持ちも、それらを抱くのはランボだけなのだ。
 そう、リボーンとの再会を意識しているのはランボだけである。
 十年前、リボーンとランボが会っていた期間は僅かなものだったが、ランボにとってあの期間は特別な日々だったのである。
 あの楽しかった日々も、明日が待ち遠しかったワクワクした気持ちも、今でも鮮明に覚えているくらいだ。
 しかしそれはランボだけの感情で、リボーンにとっては記憶にも残らない些細な出来事だったのだろう。
 ランボはそれを残念に思うが、仕方ない事かもしれないと諦めた。
「……リボーンは忘れてるみたいだけど、オレは十年前に森の中でリボーンと会っているんだよ」
 ランボは微かな苦笑を浮かべて、「覚えてる?」とリボーンを見つめ返した。
 リボーンの容貌は十年前の面影が薄れ、冷たく整ったそれは端麗という形容が相応しいものになっている。体格の方も、柔なランボとは違って精悍さを感じさせる美丈夫になっていた。
 そんなリボーンは形良い眉を顰めて記憶を巡らせ、少しして何かを思い出したようにランボを見る。
「……ああ、あの森にいた煩いガキか」
「酷いね」
 やっと思い出してくれたと思えば、リボーンの記憶に残っていたランボの印象は酷いものだった。
 しかし当時の事を思えば、ランボは何も言い返せない。
 ランボは嬉しくて毎日リボーンの所に通っていたが、リボーンが相手にしてくれた事などなかったのだ。
 その事を思うとランボも微妙な気分になるが、気を取り直して今度は自分の疑問を口にする。
「リボーン、今度はオレが質問する番だよ。オレはどうして此処にいるの?」
 これはランボが一番疑問に思っている事だった。
 ランボはどうして自分が此処にいるのか、どうして怪我の治療までされているのか分からない。
 十年前に会ったという縁だろうかと思ったが、リボーンがランボを忘れていた事は先ほどはっきりしたのだ。
「オレは、あのまま死ぬんだと思ってた」
「ああ、あのまま見殺しでも良かった」
 ランボの疑問に対し、リボーンから返された答えは淡々としたものだった。
 あまりに淡々としていて一瞬冗談かと思ったが、リボーンは「俺の誤算だった」と澱みなく言葉を続ける。
「お前、人間の中で暮らしいたヴァンピールだろ。だから少しは俺達の役に立つかと思ったが、ヴァンパイアの存在に驚いているようじゃ無理だな」
「……や、役に立つとか無理だとか、それってどういう意味だよっ」
 リボーンの言葉の意味が分からず、ランボは意地になって噛み付く。
 だが、リボーンは「お前には関係無い事だ」と一蹴し、漆黒の外套を翻して踵を返した。
 リボーンはランボに深い事情など話さず、部屋の扉に向かう。
 しかし扉の前で振り返り、
「怪我が治るまで此処にいる事を許してやる。だが、治ったら出て行け」
 とそれだけを言い残して部屋を出て行ったのだった。
 残されたランボは、呆然としたままリボーンを見送るしか出来ない。
「……いったい何なんだよ」
 ぽつりと漏らした呟きに、返ってくる答えはなかった。
 分からない事ばかりだ。
 分かる事といえば、十年前に出会ったリボーンはヴァンパイアだったという事。
 そしてそのヴァンパイアに村を襲われ、負傷したランボはリボーンに助けられて此処にいるという事。
 それなのに、リボーンがランボを助けた理由は誤算の一言で片付けられてしまった。
 いったい自分は何なのだろうか。
 ランボは、一方的とはいえリボーンと十年振りに再会して喜ぶ気持ちがあった。だが、素直に喜べない事も分かっていた。
 だってリボーンは憎むべきヴァンパイアで、ランボの村を襲ったのだ。
 あの村はランボにとって大切な村だった。
 素性を明かしていなかったとはいえ、ランボを唯一受け入れてくれた村で、ランボも此処こそが居場所だと思えた村なのだ。
 しかしヴァンパイアに襲われ、自分がヴァンピールだと知られた時の事を覚えている。
 今まで向けられていた好意が一変し、排他するような罵声を浴びせられた。
 村人に嫌悪の眼差しを向けられた瞬間、ランボの期待や希望は打ち砕かれたのだ。
 村が襲われ、ヴァンピールだとばれた事で排他され、ランボは悲しかった。否、悲しいというより寂しかった。
 此処も駄目なのか……、と寂しい気持ちで一杯になったのだ。
 幼い頃から人間の世界で生活していたランボは、その影響を受けてヴァンパイアを憎いと思っている。
 自分の中にヴァンパイアの血が流れてさえいなければと思う事もある。
 だがだからといって、人間に対して盲目的に傾倒している訳ではなかった。
 人間はヴァンピールという事だけでランボを差別するのだ。そうした扱いを受けて、人間に対して純粋な好意を向けられる筈が無い。
 ランボは薄々分かっていたのだ。
 人間の世界にランボの居場所は無いという事を。
 ヴァンピールである事を隠し、人間として普通の生活をするのは簡単な事ではないと。
 ランボは静かに目を閉じる。
 今はいろんな感情が混ざり合い、混乱している。
 悲しいよりも寂しくて。
 憎いよりも悔しくて。
 自分でも気持ちの整理をつける事が出来ない。
 ただ、はっきり分かっている望みが一つだけある。
 それは、居場所が欲しいという事だけだった。







 ランボがリボーンの城で生活を始めて三日が経過した。
 三日前は混乱が酷くて気持ちの整理がつかなかったランボだが、三日が経過して落ち着きを取り戻してきている。
 自分の気持ちに整理はついていないが、生き延びた限りこれからの事を考えなくてはならないのだ。
 そして身体の方も最初は寝返りすらままならなかったランボだが、今ではベッドから身を起こせるようになっている。
 深手を負っていた背中の傷も完治に向かっているようで、痛みもだいぶ引いてきていた。
 普通の人間なら今もベッドの住人であっただろうが、ヴァンピールとして高い自然治癒力を持つランボは、三日目にして歩行に挑戦しようと思えるほど快復していたのだ。
「よいしょ……っと」
 ランボはベッドからゆっくり身を起こすと、そっと両足を床に着ける。
 足裏が地に着く感触は久しぶりのもので、ランボは安堵の笑みを浮かべた。
 ベッド生活はたった三日間だったというのに、とても懐かしいような気がしたのだ。
 そして地に足が着けば、次は立ちたくなる。
 ランボは身体のバランスを崩さぬように注意し、なるべく患部に負担が掛からないようにゆっくりと立ち上がった。
「わっ、立てた……!」
 立つ事が出来たランボは思わず歓声を上げる。
 気を抜けば身体がぐらりと傾いでしまうが、それでも三日振りに立てたのだから嬉しくない筈が無い。
 ランボは床に着く自分の足元を見下ろす。
 少しだけなら動かしても良いだろうか。まだ安静が必要だという事は分かっているが、そろそろ歩けるようになっていると思うのだ。
 ランボは緊張した面持ちで息を飲むと、慎重に一歩踏み出してみる。
「つ……ぅ」
 ランボは小さく呻き、痛みに眉を顰めた。
 足を動かせば背中に痛みが走り、ランボは怯みそうになったのだ。
 だが、痛みは我慢出来ない程のものではなかった。
 暫くして痛みに慣れたランボは、部屋の中を歩くという歩行練習を開始する。
「く……ぅ、つ……」
 広い室内を壁伝いに歩き、三日間も横になっていた身体を歩く事に慣らしていく。
 最初はふらついてしまったが、徐々に足元に力が戻っていくようだった。
 こうしてランボは室内をゆっくり歩き回ったが、ふと、扉に視線を向けた。
 三日間も寝たきりだったランボは、扉の向こうに興味を抱く。
 この三日間、ランボはリボーンと顔を合わせていなかった。
 それどころか、城の従者とも顔を合わていない。
 食事や着替えはランボが眠っている間に用意されていたが、リボーンが世話をしてくれるとは思えない為、用意してくれているのは城に仕える従者だと思っている。だがランボはその姿を一度も見た事がなかった。
 これだけ立派な部屋を有する城なのだからそれなりに従者がいても可笑しくない筈なのだが、不思議な事に気配すら感じる事はなかったのだ。
 それを不思議に思うランボは、扉の向こうを見てみたくなる。
 特に部屋を出る事を禁止されている訳ではないので、少しくらいならという軽い気持ちだった。
 又、三日間も部屋に閉じこもりきりだったので外に出たいのだ。
 ランボは緊張した面持ちでドアノブを握ると、ゆっくりと扉を開ける。
 そして扉の向こうに広がった光景に息を飲んだ。
 扉の向こうは当然廊下があったのだが、今まで質素な生活をしてきたランボにとって初めて見る光景だった。
 床や壁は光沢ある大理石が敷き詰められ、広く長い廊下の一定間隔毎に彫像が配置されている。しかも大きな窓から陽の光が射し込み、大理石の光沢に反射して明るい雰囲気を醸しだしていた。
 それを目にした時、ランボは何だか不思議な心地になる。
 人間社会で育ったランボは、ヴァンパイアは朝陽が苦手で、暗い場所を好むというイメージを持っていたのだ。
 それなのに、今までランボがいた部屋もそうであったが、この廊下にしても城内はイメージに反して華やかだった。
「……ヴァンパイアって、朝陽とか明るいものが苦手なんじゃなかったっけ?」
 ランボは首を傾げつつも、広い廊下を壁伝いに歩き出す。
 何処へ向かって歩いて良いのか分からないが、迷子にならないように注意しながら進んだ。
 最初は初めて見る彫刻や華やかな廊下の造りに感心しながら歩いていたランボだが、それが見慣れた頃、奇妙な違和感を覚えて首を傾げた。
 部屋に篭もっていた時も不思議に思っていたが、やはり他人の気配がしないのだ。
 廊下を歩いていれば誰かと擦れ違うかと思ったが、それ以前の問題である。
 この城はどれだけ廊下を歩いても行き止まりが見えないというほど広いのに、誰とも出会わないというのは奇妙な感じだった。
 静寂に包まれる廊下にランボの足音だけが響き、ランボはそれを耳にしながら進み続ける。
 こうして歩いていたランボだったが、ふと、前方に扉が少しだけ開いた部屋があった。
 それに気付いたランボは、誰かいるだろうかと近付いていく。そして扉の僅かな隙間から部屋を覗いた。
「リボーンだ……」
 三日振りに見たリボーンの姿にランボは小さく呟く。
 リボーンは部屋のソファに腰を下ろし、手元で何か作業をしているようである。
 ランボが視界を凝らして手元の作業を覗き込むと、リボーンはどうやら短銃の手入れをしているようだった。
 ヴァンパイアが銃器を手にしているなんて、何だか変な感じである。
 ヴァンパイアといえば特殊な能力を持っていて、代表的な攻撃方法といえば首元に牙を立てて吸血するというものなのだ。
 それなのにリボーンは慣れた手付きで銃の手入れをしており、ヴァンパイアの攻撃方法に銃が含まれるなんて、またしてもイメージとは違うものを目にしてしまった。
 ランボは不思議そうな面持ちでリボーンの姿を眺めていたが、
「――――そんな所でこそこそしてんじゃねぇ」
「ば、ばれてたんだ……」
 不意に、リボーンから声が掛けられてしまった。
 気付かれていた事にランボは驚くが、今更逃げる訳にもいかずに部屋に入る。
「よく気付いたね、隠れてたつもりだったんだけど」
「あれで隠れてたのか? そっちの方が驚きだぞ」
 リボーンに馬鹿にされてランボはムッとするが、部屋に入ったものの何もする事がないので「座るね」とリボーンの向かいのソファに腰を下ろした。
「わ……っ」
 ソファに腰を下ろした瞬間、柔らかなスプリングにランボの身体が沈む。
 革張り造られた上等なソファは柔らかなクッションが効いており、木で造られた椅子しか知らないランボはこのような弾力ある椅子に座るのは初めてだったのだ。
「す、すごい……」
 ランボはソファの弾力を確かめるように何度も手で押したり座り直したりしてしまう。
 ベッドのスプリングも慣れるまで時間が必要だったが、ソファに座るのも慣れる事が必要なようである。
 ランボは初めて座るソファに少し高揚した気持ちになってしまったが、ふと、眼前のリボーンが自分を見ている事に気付いてハッとする。
 リボーンの眼差しには呆れと驚きが含まれており、ランボははしゃぐ姿を見られてしまった気恥ずかしさに俯いた。
 室内に微妙な沈黙が落ち、ランボは居た堪れなさを誤魔化すように咳払いをする。
「あ、あのさ、……オレが寝ている間に世話をしてくれてた人って誰なの? お礼を言っとかないとな、なんて思って……」
 気恥ずかしさに場が持たなかったランボは、今まで疑問に思っていた事を何となく口にした。
 それは居た堪れなさを誤魔化す為に出てきた言葉だが、食事や着替えを用意される度に思っていた事である。
「この城でリボーン以外の人を見かけないし、まさかリボーンが……」
「俺が世話する筈ないだろ」
 ランボは軽い冗談のつもりで「リボーンが世話を?」と続ける筈だったが、それは続ける前に否定された。
 しかも否定するリボーンはとっても嫌そうな表情をしており、ランボはそこまで嫌がらなくても良いのにと内心で思ってしまう。
「それじゃあ、誰が食事の用意とかしてくれたんだよ」
 ランボがムッとした様子で言い返せば、リボーンは面倒臭そうにしながらも「レオン」と名前を呼んだ。
「レオン……?」
 初めて聞いたレオンという名前にランボは首を傾げる。
 やはりこの城にはリボーン以外のヴァンパイアがいたのだろうか。
 だが、リボーンの呼びかけに出てきたのはカメレオンだった。
 レオンという名前のカメレオンはソファの陰から出てくると、リボーンの肩に登ってぎょろりと丸い目を動かす。
「えっ、レオンってカメレオン?」
 驚きを隠し切れないランボはレオンを凝視するが、リボーンは「そうだぞ」と淡々とした様子で言葉を続けた。
「お前の世話をしていたのはレオンだ」
「そ、そんな……、だってカメレオンだよ? 食事や着替えの用意なんて出来るの?」
「レオンを普通のカメレオンと一緒にするな。こいつは俺の相棒で形状記憶カメレオンだ。人間の姿くらい変身できる」
「そんな事って……」
 嘘のような話にランボは言葉を無くした。
 カメレオンが変身するなんて信じ難い事であるが、ヴァンパイアの相棒だというならそんな事も有るのだろうか。
 ランボは困惑しながらも無理やり納得すると、リボーンの肩にいるレオンに小さく頭を下げる。
「その、いろいろありがとう……」
 カメレオンにお礼をするというのも可笑しなものだが、お世話になっていた事には変わりないのだ。
 ランボが礼をするとレオンはぎょろりと目を動かし、またソファの陰へと隠れてしまう。
 そんなレオンをランボは驚きながらも見送ったが、リボーンに向き直った。
「ところで、この城にはリボーンとレオン以外いないの? この部屋に来る時も人を見かけなかったんだけど」
「当然だ。今、此処に住んでいるのは俺とレオンだけだ。他の連中は外に出ている」
「他の連中……?」
「お前には関係無い」
 またしても関係無いと素っ気無く突き放され、ランボは肩を落とす。
 だが、こんな広大な面積を誇る城に一人と一匹だけで住んでいるなんて信じ難かった。
 でも確かにこの三日間は誰にも会うことがなく、誰の気配も感じなかったのだ。リボーンの言葉が本当なら、現在此処にいるのはリボーンとランボだけという事になる。
 このような城に十年振りに再会したリボーンと二人きりでいるなんて、何だか不思議な気分である。
 ランボはリボーンが口にした「他の連中」という言葉が気になりながらも、それについて訊き返す事は諦めた。
 リボーンという男がランボの追求如きで話してくれるとは思えなかったのだ。
 またしても居心地悪い沈黙が落ちてしまい、ランボは間が持たずに困ったように視線を彷徨わせる。
 しかしそんなランボなどリボーンは無視し、手を止めていた銃の手入れに戻ってしまった。
 それに併せてランボもリボーンの手元を何となく見つめるが、ヴァンパイアの手に銃が握られている事にやっぱり奇妙さを覚えてしまう。
「ねぇ、その銃ってリボーンの? ヴァンパイアも銃なんて使うんだね」
 銃器というのは人間だけの攻撃武器だと思っていたランボは、興味深そうにリボーンの手元を覗きこむ。
「ヴァンパイアは特殊な力があるって聞いてたし、血を吸うのが攻撃だと思ってた」
 ランボは奇妙さの感想をぽつりと漏らした。
 だが、この感想にリボーンの手元がぴたりと止まる。
「……血を吸う? 何の事だ」
「え?」
 まさか反応が返されるとは思っていなかったランボは驚いたように目を瞬くが、驚いているのはランボだけではなかった。
 リボーンも意外そうな面持ちでランボを見ていたのだ。
「……何の事だって、ヴァンパイアの事だよ。人間の間では、ヴァンパイアっていうのは血を吸うっていうのが定説だよ」
 皆怖がってるんだから、とランボは人間達の間で囁かれている定説を言った。
 しかしそれを聞いたリボーンは眉を顰める。
「血を吸うなんて野蛮だぞ。出来ない事もないが、わざわざそんな真似をする奴は稀だ」
「え?! ヴァンパイアは血が食事じゃないの?!」
「俺達の食事は人間が食べるものと同じだ。そもそも血液だけで生きていける訳がねぇだろ」
 ヴァンパイアは人間の血を主食にしていると思っていたランボは、リボーンの言葉によって常識が根本から覆されていく。
 ランボは動揺してしまうが、それでも崩れ落ちる常識に縋ろうと質問を続けた。
「そんな……。それじゃあニンニクは? ニンニクは駄目だって聞いたよ」
「誰に聞いたか知らないが、ニンニクは嫌いじゃない。食事に出されれば食べるぞ」
「た、食べちゃうの?」
 リボーンは苦手どころか食べるとまで言ってしまった。
 ランボはリボーンの言葉に愕然する。
 人間達の間では、ヴァンパイアが血を吸う事もニンニクを苦手にする事も常識のように語られてきたのだ。中には生娘の血を好むという話もあり、ランボもそれを疑ってもいなかった。
「……朝陽や教会が苦手だっていう話もあるけど、これも違ったりする?」
「当然だろう。健康的なヴァンパイアは朝陽とともに目覚めて一日の活動を開始するぞ。教会だって人間が作った宗教だろう、ヴァンパイアの間にも似たような宗教はある」
「そ、そうなんだ……」
 ランボは言葉が無かった。
 ショックが大き過ぎて言葉が見つからないのだ。
 でもリボーンの言葉通りなら、リボーンの手元にある銃器も納得がいく。
 それにリボーンの言葉を裏付けるものとして、リボーンとランボの十年前の出会いがある。
 もしヴァンパイアが朝陽に弱ければ、日溜りの場所でランボはリボーンに会えなかった。
 ランボは初めて知った新事実に思わず感心してしまう。ヴァンパイアと人間は種族が違っても同じ世界に存在するのだから、文明の発達が同等なのは当然だったのだろう。
 リボーンはヴァンパイアの特殊能力については否定しなかったが、その他の事はほとんど人間と一緒なのだと言った。
 しかもヴァンパイアに備わっている特殊能力も多岐に渡るもので、いろんな作用があるのだという。例えば、村を襲った時にヴァンパイア達が見せていた素早い動きもその一つだった。
 そう考えるならヴァンピールに備わっている高い自然治癒力も、ヴァンパイアの血が作用した特殊能力の一つだと考えられる。
 しかしヴァンパイアにとって高い自然治癒力など特殊能力以前の当たり前のもので、自然治癒力しかないヴァンピールなど少し頑丈なだけという認識しかないようだった。
 ランボはこうして話を聞いているうちに、今まで自分を悩ませてきた高い自然治癒力も取るに足らない事のように思えてきた。
「リボーンの特殊能力って何?」
「お前なんかに勿体無くて教えられるか」
 リボーンは素っ気無い言葉で答える事を拒否した。
 ランボはそれにムッとしてしまうが、今のリボーンは人間達の間で定説になっているヴァンパイア像に頭が痛いようである。
「人間はヴァンパイアを何だと思っているんだ」
「……魔物とか、いろいろ」
「魔物か……、それも有りかもしれないが、それならヴァンパイアから見れば人間も魔物という事になるぞ」
 リボーンは淡々とした口調で言ったが、ランボは妙に納得してしまう。
「ヴァンパイアって、人間とあんまり変わらないんだね」
「まあな。ヴァンパイアと人間は進化の過程で枝分かれした種族ってところだろう」
 リボーンの言葉に、ランボは感心した様子で頷いた。
 リボーンが話す内容は無学に等しいランボにとって難しいものだが、何となく意味を把握する事ができる。
 ヴァンパイアと人間は、生活様式も同じで、食事内容も同じで、姿形も似ている。特殊能力の有無以外は何も変わらないのだ。
 ランボは今までヴァンパイアとは恐ろしい魔物の類いだと思っていたが、リボーンの話を聞いていると少し違うような気がした。
 だが、一つ気になる事がある。
「……それじゃあ、どうしてヴァンパイアは村とか襲ったりするの?」
 ランボが気になる事はこれだった。
 ヴァンパイアの主食が人間の血でないなら、どうして村を襲ったりするのか分からなかったのだ。
 リボーンが村を襲った訳ではないが、村を襲ったのは確かにヴァンパイアだった。
 そんなランボの疑問に、リボーンは少し思案しながらも短く答える。
「探してるんだ」
 リボーンはそれだけを言った。
 ランボは、この『探している』という言葉に二回ほど聞き覚えがある。
 一つ目は十年前だった。
 十年前の記憶は曖昧なものが多いが、リボーンが初めてまともに相手にしてくれた言葉として印象に残っている。
 当時は探しているという意味を深く考えなかったが、何だか重要な事に思えた。
 そして二つ目は、先日に村が襲われた時の事である。
 村を襲ったヴァンパイアが「探している」と言っていたのだ。
「探してるって、何を?」
「お前には関係無い」
 ランボは緊張した面持ちで訊いたが、リボーンの返事はまたしても素っ気無いものだった。
 突き放されたランボはムッとしてしまう。
 だが、ムッとしながらも不思議とあまり腹は立たなかった。
 ランボは気が付いたのだ。
 自分は今、とてもワクワクしている。
 このワクワクとした気持ちはとても懐かしいもので、十年前に感じていたものだと気が付いた。
 十年前、リボーンと森で会えるのが嬉しくて、明日が待ち遠しくなるようなワクワク感を覚えていたのだ。それが今、リボーンとこうして会話を交わす事で十年前の楽しい感覚が蘇ってきている。
 それは無くしたものが蘇るような、そんな感覚だった。
 ランボはそうした自分の感情に、村が襲われて以来ようやく笑顔を浮かべる事が出来たのだった。







   第四章・もう一つの世界





 ランボがリボーンの城で暮らすようになって一週間が経過した。
 今まで質素な暮らしをしてきたランボにとって城の暮らしは慣れぬものだったが、リボーンと話した時以来、此処で過ごせる事を楽しいと思えてきている。
 十年振りだったという事もあって最初はリボーンの事を近寄り難く思っていたが、十年前よりも親しく話せるようになったのだ。
 リボーンの態度は相変わらず素っ気無く、ランボを邪険に扱う時もあったが、それでも十年前のワクワクとした気持ちが確かに蘇っていたのである。
「この食事もレオンが作ってるんだろ? レオンは料理が上手なんだね」
 ランボは目の前に並べられた料理に目を輝かせ、さっそくとばかりにメインである肉料理にフォークとナイフを伸ばした。
 ランボの前には美味しい料理が並べられており、そして向かいの席にはリボーンがいる。
 寝たきりを余儀なくされていた時はベッドで一人きりの食事をしていたが、ベッドから起き上がれるようになってからはリボーンと同じ食卓についているのだ。
 そして今、夕食として並べられた料理は、肉料理を中心としてサラダやスープやパンというふうにランボからすれば贅沢な品々だった。
 しかも一品一品に手の込んだ味付けがされており、全ての料理がランボにとって目新しい。
 村で暮らしていたランボはパンを主食とし、パンと一緒に並ぶものといえばスープか果物くらいしかなかったのだ。
「美味しいね。こんな料理食べた事ないよ」
 ランボは一口食べると料理の感想を口にする。
 ランボにとって一つ一つの料理が目新しい為、料理に対する感想は尽きる事がないのだ。
「煩せぇぞ。黙って食べれねぇのか」
「だって本当に美味しいんだから仕方ないだろ」
 リボーンに注意され、ランボはムッとした表情で言い返す。
 だが、そんなランボをリボーンは苛立ったように睨み据えた。
「今は食事中だぞ」
「……ごめん」
 リボーンから言外にマナー違反だと諭され、ランボは小さく肩を落とす。
 食事中の会話は推奨されるものだが、それもマナーあってのものなのである。行き過ぎたお喋りはマナー違反となってしまうのだ。
 ランボは今までマナーなどとは無縁の生活をしていたが、リボーンは意外にもそういった事に煩いのである。
 ランボは気を取り直して食事を再開するが、ふと、ある事を思い出した。
「ねぇ、リボーン。ちょっと訊きたい事があるんだけど」
「なんだ」
「今日、窓から外を見てたら見つけたんだけど、この城の近くに村があるんだね」
 ランボが思い出した事とは、部屋の窓から外を眺めていた時に見つけた村だった。
 この城は深い森の中に建っている事もあり、濃い緑に覆われた四方は何処を眺めても美しい光景が広がっているのだ。
 ランボは暇さえあれば外を眺めていたが、今日、森の緑の合間に小さな村を見つけたのである。
「あんな所に村があるなんて気付かなかったよ。どんな村かリボーンは知ってるんだろ?」
「まあな、あそこはヴァンパイアが住む村だ」
 ランボの問いに、リボーンは素っ気無いながらも答えてくれた。
 だが、答えの内容はランボが予想もしていなかったものである。
「ヴァンパイアの村?!」
 驚きが隠し切れないランボは、先ほど注意されたのも忘れて大きな声を出していた。
 そんなランボの大声にリボーンは眉を顰めたが、今のランボにはそれを気にする余裕はない。
 だって、リボーンはヴァンパイアの村と言ったのだ。
 人間の村があるならヴァンパイアの村があっても可笑しくないのだが、やっぱりランボは驚いてしまった。
 そして、ヴァンパイアの村があると知ったなら、行ってみたいと思ってしまう。
 これは好奇心であるが、以前では考えられない好奇心だった。
 以前のようなヴァンパイアの事を何も知らなかった時なら、幼い頃から刷り込まれたヴァンパイアへの印象と恐怖心のままに決して近付かなかった筈だ。
 でも今はそういった感情はなく、純粋に村を見てみたいというだけである。
「ヴァンパイアの村ってどんな村なの?」
「普通の村だぞ。人間の村と変わらない」
 ランボは好奇心のままに訊いてみたが、リボーンの答えは素っ気無いものだった。
 だがヴァンパイアの村が人間の村と同じようなものであったとしても、ランボの好奇心は挫かれない。
「あのさ、その村に行ってみてもいい? 見てくるだけだから」
 ランボは緊張した面持ちで躊躇いつつも訊いてみた。
 反対される理由など思い当たらないが、好奇心という興味本位さが村に住むヴァンパイア達に申し訳なかったのだ。
 しかしランボの心配は杞憂のもので、リボーンは「好きにしろ」と簡単に許可をくれた。
「有り難う、明日行ってみる!」
 許可を貰えたランボは思わず満面の笑みを浮かべたが、そんなランボにリボーンは一つだけ忠告する。
「行くのは勝手だが、自分がヴァンパイアじゃない事を見抜かれないようにしろ」
「分かった、気を付けるよ」
 浮かれたランボは、リボーンの忠告の意味を深く考えずに上機嫌で頷く。
 今は村へ行ける嬉しさが勝り、明日が待ち遠しいようなワクワクした気持ちに胸が躍っていたのだ。
 こうしてランボは食事を進めながら明日に思いを馳せ、今夜は早く眠る事に決めたのだった。







 翌日の朝。
 普段よりも早起きをしたランボは、朝食を食べ終えると城を出発した。
 目的地はもちろん森の中にあるヴァンパイアの村である。
 怪我が完治していない状態で知らない森を歩く事に不安はあったが、毎日していた歩行練習のお陰で体力が戻りつつあった。又、怪我の痛みもほとんど残っておらず、歩くだけなら問題ないのだ。
 森を歩くランボは、背後を振り返って出発地点である城を目にする。
「王様のお城みたい」
 初めて目にした城の外観にランボは息を飲む。
 ランボが城に連れられたのは気を失っている時だった為、城の外観を見るのは初めてだったのだ。
 深い森の中に聳える城は荘厳な外観をしており、石造りのそれは古い歴史の重みを感じさせる。
 広大な敷地面積と荘厳な外観は他を圧倒する威圧感を醸すが、かといって森の自然を侵害する雰囲気などなく、森の木々すらも城を守る要塞のようであった。
 ランボは背後に聳える城を何度も振り返り、自分の位置を確かめながら森を進む。
 目的地である村の位置は城の窓から確かめてあるが、森を歩くにあたって油断は禁物なのだ。
 ランボは森の道無き道を進み、城から村へと向かう。
 途中、初めて目にする珍しい動植物に目を奪われ、ランボは少し道草しながらも森を歩いた。
 こうしてランボは暫く歩き、目の前の草木を掻き分けた時。
「うわ……っ」
 草木を掻き分けた先に広がったのは、瑞々しい野菜が実る畑だった。
 森の中に出現した畑にランボは感嘆の息を漏らし、ようやくヴァンパイアの村に到着したのだと安堵する。
「人間の畑と一緒だ」
 ランボは広い畑を見渡しながら、自分が人間の中で暮らしていた時に耕していた畑を思い出した。
 眼前の畑に実るそれは、ランボが丹精籠めて育てていた畑の農作物と同じもので、リボーンが話していた通りヴァンパイアの生活が人間の生活と変わらない事を証明している。
 ランボは興味深く畑を眺めながら、その先にある村に向かって歩き出した。
 畑にはトマトや瓜やじゃが芋など豊富な作物が育っており、これをヴァンパイアが早起きして育てているのだと思うと何だか不思議な気持ちだ。
 前もってリボーンから聞いていたが、こうして実物を目にするとやっぱり驚いてしまった。
 ランボは畑を抜け、その先に村を見つける。
 村からは子供のはしゃぐ声が聞こえ、それに導かれるようにランボは村に入った。
「……人間の村みたいだ」
 村に入ったランボの第一声はこれだった。
 先ほど畑を目にした時と同じだが、これ以外の言葉が思い浮かばなかったのだ。
 村の光景はランボが暮らしていた人間の村と同じもので、村の広場で子供達が遊びまわり、それを母親や老人が見守り、働き盛りの男達は仕事をしているようである。
 村に建ち並ぶ家々の造りや、そこに住むヴァンパイアの姿形は人間と似ている為、何も知らずに村に入れば人間の村だと思っていた事だろう。
 ヴァンパイアと人間の村を比べても、違いを探す事の方が困難なように思えるのだ。
 ランボは関心した面持ちで村の中を歩いていたが、ふと、自分が村に住むヴァンパイア達にちらちらと視線を向けられている事に気が付く。
 その視線は遠巻きながらも余所者に対する好奇が含まれており、ランボは苦笑混じりに「仕方ないか」と納得した。
 この村は深い森の中にある村なのである。旅人すらも滅多に近付かないと思われる村に、ランボのような村外の者が現われれば注目されるのは当然だろう。
 怯えられてはいないようだが、さすがに居心地が悪い。
 ランボはどうしようかと困ってしまうが、そんなランボに村の子供達が近付いてきた。
 好奇心旺盛な村の子供達は、困惑した様子で見守っている母親達の注意も聞かず、ランボの前に駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん誰?!」
「何処から来たの?」
 あっという間にランボを囲んだ子供達は、口々に質問を投げかけてくる。
 思わぬ質問攻めにランボは慌ててしまうが、無邪気な子供達の様子に思わず笑みを浮かべた。
 余所者という事で不審者扱いを受けるより、こうして質問攻めにあった方が良いのだ。
「オレの名前はランボっていうんだ。今はリボーンの所に厄介になっているんだよ」
 ランボが優しい口調でそう言うと、子供達は驚いたように目を丸める。
「リボーン様のお城にいるの?!」
 子供達は口々に「リボーン様のお客様だ」「リボーン様のお知り合いだ」とリボーンの名前を繰り返す。
 そんな子供達の様子に、ランボも少し驚いてしまった。
「リボーンを知ってるの?」
「当たり前だよ! リボーン様は王様にお仕えしている貴族様の一人だもん!」
 子供達の答えを聞いて、ランボは更に驚きを大きくした。
 リボーンが貴族だという事にも驚いたが、それ以上に子供達が口にした「王様」という言葉が引っ掛かったのだ。
 ヴァンパイアの子供達が口にした王様は、ヴァンパイアの世界に存在する王という事である。
 ヴァンパイアの王など初めて聞いたランボは、興奮した面持ちで子供達に詰め寄った。
「王様って何処にいるの?」
 好奇心を隠し切れないランボは、王がどんなヴァンパイアなのか聞いてみたい。
 しかし、そんなランボの質問に子供達は寂しそうに肩を落とした。
「今はいないよ。探してるんだけど見つからないの」
「探してるって……」
 探しているという言葉が引っ掛かる。
 ランボはリボーンの口からも数回だけ「探している」という言葉を聞いた事があるのだ。
「そう、皆で探してるんだよ。リボーン様や他の貴族の方々も探してるけど見つからないんだ」
「そうなんだよ。だから、お城にはリボーン様しかいないの」
「他の貴族の方々は王様が見つかるまで帰って来ないって言ってたけど、リボーン様だけは時々帰ってきてくれるんだ」
 子供達から口々に王や貴族について語られた。
 一斉に語られるそれにランボは慌てたが、それでも内容を聞き漏らす事はない。
 何故なら子供達の言葉の一つ一つが、ランボが今までヴァンパイアに対して持っていた疑問を解消していったからだ。
 子供達の話では、ヴァンパイアというのは一人の王によって統率された種族だった。
 王の側近として複数人の貴族と呼ばれるヴァンパイアがおり、リボーンも貴族の中の一人なのだという。
 王や貴族が持つ特殊能力は他のヴァンパイアとは桁違いのもので、上位に君臨する力の強いヴァンパイアによって世界中に散らばるヴァンパイア達は纏められているのだ。
 しかし今、たった一人の存在である王が不在なのだという。
 それはヴァンパイア達にとって重大な事だった。
 現在は貴族によってヴァンパイア達は統率されているが、それでも王の存在は絶対不可欠なのだ。
 その為、貴族自らが城を出て王を探しており、リボーンもその一人だったのである。
 ランボは、リボーンが以前漏らした「探している」という言葉の意味をようやく知った。
 リボーンは十年前からヴァンパイアの王を探しているのだ。
 ランボは、ヴァンパイアの王や貴族達の存在を知り、自分は重大な話を聞いてしまったのだと実感する。
 村のヴァンパイア達が王や貴族の事を話す姿は真摯なもので、それが切実な願いである事が分かるのだ。
「早く見つかると良いね」
「うん、きっと見つかる! 王様は帰って来てくれるよ!」
 ランボの慰めに、子供達は大きく頷く。
 子供達は貴族が王様を見つけて帰ってきてくれると信じているのだ。
 ランボは子供達の力強い言葉に表情を綻ばせると、「そうだね、早く見つかるといいね」と子供達と一緒に王の帰りを信じる。
 それからのランボは子供達と徐々に打ち解けていき、一緒に遊びだした。
 こうしてランボは、空が夕焼けの色に染まるまでヴァンパイアの子供達と一緒に過ごしたのだった。







 その日の晩。
 村から城に帰ったランボは、リボーンと一緒に夕食の食卓についていた。
 普段なら料理の感想について話すランボだが、今日は料理の事よりも村で出会った子供達の事について話している。
 リボーンも料理の話より村の子供達の話の方が好むようで、今日は煩いと注意される事はなかった。
 きっと貴族として村で暮らすヴァンパイアの生活が気になり、今日は大目に見てくれているのだろう。
 こうして話していたランボだが、ふと、申し訳無さそうにリボーンを見た。
 今日、ヴァンパイアの村へ行った事はランボにとって楽しい思い出になったが、その際、偶然とはいえヴァンパイアの王の存在を知ったのだ。
 その内容は、リボーンが今まで「関係無い」とランボに聞かせていなかったものばかりで、ランボはそれを勝手に知ってしまった後ろめたさがあった。
 しかし知ってしまった事を黙っている事も出来ず、ランボは躊躇いながらも口を開く。
「ヴァンパイアにも王様っているんだね。知らなかったよ」
 ランボが話しを切り出せば、リボーンは食事の手を止めた。
「聞いたのか?」
「……うん、村でいろいろ聞いちゃった」
 勝手に聞いてごめん……、とランボは小さく謝罪した。
 不可抗力とはいえ申し訳無く思うのだ。
 そして何より、ランボ自身も子供達の話しを進んで聞いていた。
 しかしそんなランボに、リボーンは慌てた様子もなく「謝らなくていい」と淡々と言葉を続ける。
「別に隠していた訳じゃない。必要が無かったから言わなかっただけだ」
 リボーンの返事は素っ気無いものだった。
 その素っ気無さは、ランボが知っていようがいまいがどちらでもいい、と言外に含むものである。
 ランボは怒られなかった事に安堵しつつも、言外に含まれた意味に寂しさのようなものを感じてしまう。
 どうしてそんな事を思ってしまうのか分からなかったが、何故かそんな気持ちになってしまったのだ。
「早く王様が見つかるといいね」
 ランボは寂しい気持ちを誤魔化すように、明るく振る舞ってそう言った。
 だが。
「そうだな。王が戻る事はヴァンパイアにとって悲願だ」
 悲願、と口にしたリボーンの眼差しは思い掛けないほど真摯なものだった。
 黒く鋭い眼差しに憂いを忍ばせ、切実な思いを語っているようだった。
 悲願とまでされる真摯な願いに、ランボは今度こそ掛ける言葉が見つからない。
 安易な気持ちでそこに触れてはいけないような気がしたのだ。
「悲願か……」
 ランボはぽつりと零す。
 リボーンに悲願とまで言わせるヴァンパイアの王とはどんな人物なのだろうか。
 ランボは正面にいるリボーンを見つめる。
 今のリボーンは普段通りの様子で食事を進めており、先ほどの真摯さは影を潜めていた。
 でも、束の間とはいえリボーンが見せた切実な真摯さは本物だった。
 その姿を見てしまったランボは漠然とした思いが込み上げる。
 リボーンに十年以上も探し求められたら、自分はいったいどんな気持ちになれるだろうかと。
 そして何より、リボーンが探している相手が自分だったら良かったのにと。
 ヴァンパイアの王に自分を当て嵌めるなんて恥知らずもいいところだが、リボーンの真摯さを目にした時、何故かそういった思いが込み上げてきてしまったのだ。







 それから、翌日からもランボは毎日のようにヴァンパイアの村に通いだした。
 朝早くから夕方まで毎日出掛けるランボに、リボーンは怪我の治りが遅くなると苦言を漏らす事もあったが、それでも村へ行く事を止められなかった。
 今では村の子供達だけでなく大人とも親しくしており、ランボは村で過ごす時間を楽しんでいるのだ。
 そうした日々が続き、ランボは今日も朝から村を訪れていた。
 村を訪れたランボは、村の大人に頼まれて二人の子供とともに森へ入っていく。
 二人の子供は今から森へ木の実を採りに行くのだが、一緒に行ってやって欲しいと頼まれたのだ。
 二人の子供はまだまだ幼い兄妹で、慣れた森とはいえ二人きりで森へ入るのは危険だったのである。
「ランボ、こっちこっち!」
「慌てると転んじゃうよ?」
 四歳になったばかりだという女の子が、ランボの手を引いて森の奥へと進んでいく。
 そんな元気な女の子に引っ張られながら、ランボはもう片方の手で七歳になる男の子と手を繋いで森を歩いていた。
 ランボははしゃぐ子供達の姿に目を細める。
 二人はとても仲の良い兄妹で、見ているランボの方も嬉しい気持ちになれるのだ。
 ランボは二人の子供に連れられて、森の獣道を奥へと進む。
「まだ奥へ行くの? 行き過ぎると危ないよ」
「大丈夫! この前、ママと一緒に行った事があるもん!」
 あんまり奥へ行くとランボは不安になってしまうが、子供達は慣れているようで平気そうだった。
 暫く歩き続け、そしてようやく目的地へと到着する。
「す、凄い……」
 目的の場所へ到着したランボは、思わず感嘆の声を上げていた。
 目の前に広がる光景は、まるで自然に育まれた木の実畑のようであったのだ。
 木々にはたくさんの木の実が育ち、草木の合間からは花々とともに熟れた実が覗いている。
「こんなにたくさん木の実があるなんて凄い!」
「ね、凄いでしょ? たくさん採ろうよ!」
「こっちにもたくさんあるんだよ!」
 驚くランボの姿に、子供達は胸を張る。
 こうして子供達に先導され、ランボも木の実採りを楽しみだした。
 一面を彩る木の実はどれだけ採っても無くならず、三人が持ってきた籠は直ぐに一杯になる。
 木の実採りというお使いを早々に終えた三人は、此処で少しだけ遊ぶことにした。
 三人は追いかけっこをしたり、鬼ごっこをしたり、女の子のおねだりでままごと遊びもする。
 ままごと遊びでは男の子の方は恥ずかしがっていたが、ランボは喜んで遊びに参加した。
 実は、ランボがヴァンパイアの村を訪れる中で一番楽しみにしている事は子供達と遊ぶという事である。
 ランボは幼少期に同年代の子供とは遊べなかった為、こうして遊べる事が何だか嬉しいのだ。
 そうして三人は森の奥で遊びまわっていたが、暫くしてランボは駆け回っている子供達を呼び集める。
「さて、そろそろ村に帰ろうか。遅くなると、ママが心配するからね」
 そう、そろそろ帰らなくてはならない時間なのだ。
 夕暮れにはまだ早いが、此処は村から離れているので早めに出発しなくてはならないのである。
「うん! 早く帰ってママに木の実を見せなくちゃ!」
「ママ、喜んでくれるかな?」
 籠に一杯詰まった木の実を嬉しそうに見つめる子供達に、ランボは優しく目を細める。
「大丈夫、喜んでくれるよ。こんなに一杯あるから、びっくりするかもね」
 ランボはそう言うと、子供達を連れて村に向かって歩き出す。
 帰りの道中も行きと同様に楽しい雰囲気が満ち、子供達は歌を歌ったり、珍しい花々を見つけたりしながら森を歩いた。
 こうして三人は暫く歩き続けていたが、ふと、ランボは嫌な胸騒ぎを覚えた。
 森には風で草木が揺れる音と野鳥の鳴き声が響いていたが、その中に獰猛な気配を感じるのだ。
 ランボは立ち止まって周囲を見回す。
 何かいる、これは直感だった。
「どうしたの?」
 突然立ち止まったランボを、子供達は心配そうに見上げてくる。
 そんな二人にランボは安心させるような笑みを浮かべると、直感が勘違いである事を祈って歩き出そうとした。
 だが。
「お、狼だ!!」
 不意に、側を歩いていた男の子が叫び声を上げた。
 その声にランボがハッとすると、草木の茂みから大きな狼が現われた。
 しかも狼は一匹ではなく群れを形成しているようで、周囲の茂みからも低い呻りを上げて姿を見せる。
 そう、ランボが感じていた獰猛な気配は狼の群れだったのだ。
「そんな……っ」
 狼の群れに四方を囲まれ、ランボの表情が恐怖に引き攣る。
 硬直したランボだが、自分の足元にしがみつく子供達に我に返った。
 本来、ヴァンパイアなら狼などに臆したりしないのだが、この子供達はまだ幼いのである。幼い二人は特殊能力を発動する事が出来ない為、いくらヴァンパイアといえど非力な子供に変わりないのだ。
 ランボは自分がしっかりしなければと気持ちを奮い立たせると、少しでも冷静に状況を見極めようとする。
 そして今にも襲い掛かってきそうな狼達を見据えると、何とか打開策を考えようとした。
 しかし、幼い二人を守りながら狼の群れから逃げ切ることは簡単な事ではない。この状態で打開策が浮かぶ筈も無く、ランボは覚悟を決めたように唇を噛み締めた。
 打開策は浮かばないが、逃げなければならないという事だけは分かっているのだ。
 ランボは自分の足元にしがみつく二人の子供に視線を落とした。
 二人はランボの足元に震えながらしがみつき、可哀想なほど怯えてしまっている。
 そんな子供達の姿に、ランボは何としても二人を守らなければと気持ちを強くした。
 狼に視線を戻したランボは、群れの中で一番小さな狼を見つける。
 そして次の瞬間。
「えい!!」
 ランボは持っていた籠を狼に投げつけた。
 籠を投げた事で狼が怯んだ隙に、ランボは両腕に二人の子供を抱えて走り出す。
 ランボは群れの中で一番小さな狼がいた場所を突破口とし、狼に囲まれた状態から脱しようとしたのだ。
「大丈夫、怖くないからね!」
 ランボは両腕の子供達を励まし、全速力で突破口を駆け抜ける。
 狼が怯んだ隙を突いた作戦はまんまと成功し、群れに囲まれた状態から脱する事が出来た。
 しかし、囲まれた状態から脱する事が出来ても、追いかけてくる狼から逃げる事は不可能に近い事である。
 ランボがどんなに全速力で走っても、野生動物である狼に敵う筈がないのだ。
 せめて木に登る事が出来ればと思うが、二人の幼い子供を連れた状態では無理に決まっている。
 そして走っている間にも狼達に距離を詰められ、あっという間に追いつかれてしまった。
「く……っ」
 またしても狼達に囲まれ、ランボはじりじりと後ずさる。
 こうして逃げ道を探して後ずさっていたが、気が付けば大樹の根元まで追い詰められ、逃げる場所が完全に遮られてしまった。
 狼達の低い呻り声が恐怖を煽る中、ランボはどうすれば子供達を守れるだろうかと考える。
 しかし打開策などある筈もなく、突破口も完全に遮られた状態では逃げる事も敵わないだろう。
 一触即発の状態の中、群れで一番大きな狼がゆっくりと近付いてきた、その瞬間。
「うわっ!」
 狼達は牙を剥き、一斉に飛び掛ってきた。
 ランボは咄嗟の判断で、子供達を懐に強く抱き締める。
 ランボは飛び掛かる狼達に背を向けて子供達を庇おうとしたのだ。
 こうしてランボは子供達を懐に抱き締めたまま、目を閉じて襲いくる衝撃を覚悟する。
 だが、予想した衝撃は何時まで経っても訪れなかった。
 その事を不思議に思ったランボは、恐る恐る目を開けて狼達がいた方を振り返る。
「嘘……」
 ランボは、視界に映った光景に大きく目を見開いた。
 視界に映ったのは、風になびく漆黒の外套。
 視界を覆う漆黒の外套は、ランボにとって見覚えのあるものだった。
「……リボーン」
 そう、リボーンである。
 狼が飛び掛かる寸前、リボーンがランボ達を守るようにして間に降り立ったのだ。
 ランボはリボーンの背中を凝視する。
 此処にリボーンがいる事が信じられない。
 突然の事で驚きを隠し切れないランボだったが、ランボや子供達を守るようにして立ちはだかったリボーンは静かに狼達を見据えていた。
 しかし、静かでありながらもリボーンの纏う威圧感は底知れぬものである。
 狼達はリボーンに向かって呻っているが、それと同時に後ずさりをしだしていた。野生動物である狼達は、本能的にリボーンの強大な力を察しているのだ。
 そして。
「去れ」
 たった一言だった。
 リボーンが静かにそう言った瞬間、狼達は脱兎の如く逃げ出していく。
 それは今まで死ぬ覚悟をしていたランボにとって、呆気なさ過ぎるものだった。
 だが呆気ないと気を抜いた途端、ランボの身体がガクリと崩れ落ちる。
「わ……っ」
 今まで張り詰めていた緊張や恐怖の糸が切れ、安堵したと同時に全身が脱力してしまったのだ。
 ランボは脱力してしまった事を情けなく思いつつ、助けてくれたリボーンを見つめる。
 しかしリボーンはランボではなく、ランボが守ろうとした子供達に顔を向けていた。
「怪我は?」
「だ、大丈夫です!」
「有り難うございます!」
 リボーンが子供達に訊けば、子供達はどこか高揚した様子で答えた。
 子供達からすれば、貴族であるリボーンは近寄ることも許されない立場のヴァンパイアである。そんな存在のリボーンが助けてくれた事に、子供達は興奮を隠し切れないのだ。
 リボーンは無事な子供達の様子に目元を和らげると、次にようやくランボに視線を向ける。
「いつまで座ってるんだ。さっさと立て」
 だが、やっと声を掛けられたと思えば、ランボに対するそれは子供達に向けたものと正反対だった。
 扱いの違いにランボはムッとしてしまうが、「分かってるよ」と言い返して立ち上がろうとする。
 だが、立ち上がろうとしたものの足に力が入らなかった。
「あ、あれ?」
 何度も立ち上がろうとするのに、意思に反して身体に力が入らない。
 そんなランボの異変に、子供達が驚いたように慌てだした。
「大丈夫?!」
「しっかりして!」
 子供達に心配されてしまったランボは「大丈夫だよ」と苦笑する。
 原因は分かっているのだ。これは間違いなく、腰を抜かしただけという情けない原因だ。
 そう、恐怖と緊張から開放されたランボは、安堵と同時に腰を抜かしてしまっただけなのである。
「どうしよう、リボーン……」
 ランボは困った表情でリボーンを見た。
 腰を抜かしただけなので時間が経過すれば立てるようになるのだが、それは立てるようになるまで時間が必要だという意味でもあるのだ。
 子供達を早く村に帰さなくてはならないので、こんな場所でランボの回復を待っている事は出来ない。
「……立てないみたいなんだけど」
 恥を忍んで腰が抜けた事を告げるが、リボーンの返事は「自分で何とかしろ」と冷たいものである。
 だが、リボーンはランボ以外に自分を見つめる眼差しに気が付いてしまった。
 二人の子供達もリボーンを頼りなげな眼差しで見つめていたのである。
 子供達の眼差しには言外に「ランボを助けて欲しい」という願いが籠められており、リボーンは子供達の願いを無碍に出来るほど冷たい性格ではない。
 子供達の前でランボを放置するという選択を出来ないリボーンは、苛立ち混じりに舌打ちした。
「……今回だけだぞ」
 リボーンは諦めたようにそう言うと、ランボの身体に手を伸ばす。そして、片腕でランボの身体を軽々と肩に担ぎ上げてしまった。
「わっ、リボーン!」
「暴れるな、落とされてぇのか」
 突然担ぎ上げられたランボは慌ててしまうが、リボーンは言葉に反してランボを突き落とす事はない。
 ランボの身体を担ぐリボーンの腕は力強く、ランボが暴れたくらいでは揺らぐことがないのだ。
 こうしてランボも一緒に帰れる事になり、子供達は嬉しそうな歓声を上げる。
 そんな子供達の喜ぶ姿に、担がれて運ばれるなんて恥ずかしいと思っていたランボも嫌がる事は出来なかった。
「リボーン、その……ありがとう」
「今回だけだ」
 ランボは素直に礼を言ったが、リボーンの返事は素っ気無いものである。
 しかしランボはそれを気にする事なく、「違うよ」とゆっくり言葉を続ける。
「それもあるけど、狼から助けてくれたから」
 ランボは照れ臭そうにそう言うと、照れを誤魔化すように子供達に視線を向けた。
 リボーンが助けてくれたから、子供達は守られたのだ。
 子供達が無事でいる事に心から安堵したランボは、自分を担いでくれているリボーンを強く意識する。
 どうしてだろうか、胸が大きく高鳴っている。
 自分を担ぐリボーンの力強い腕を嬉しいと思ってしまっている。
 リボーンの存在を、胸が苦しくなるくらい意識してしまっている。
 そして、気が付いてしまった。


 リボーンが好きだ。


 リボーンが好きなのだと気が付いてしまった。
 ランボにとって、このような恋愛感情は生まれて初めてのものである。
 こういった感情をヴァンパイアに寄せるとは、今まで想像もした事がなかった。
 ランボは初めての感情に戸惑ってしまう。
 でもこの「好き」という感情は、とても優しくて、嬉しくて、恥ずかしくて、何よりも苦しいほど切なくて、これ程大きな感情を気付かない振りなど出来ない。
 だからランボは受け入れた。
 初めての感情に戸惑いつつも、自分のリボーンへの想いを受け入れたのだった。






                                       同人誌に続く




今回はヴァンパイアパラレルです。
ランボ5歳〜25歳で一本ストーリー。
一度。二人の20年間を一本ストーリーで書いてみたかったので満足です。
で、内容なんですがシリアスです。
ランボが散々な目に遭います。でもハッピーエンド。
ランボたんは幸せになる為に生まれてきたので、ハッピーエンドは法則です。





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